お侍様 小劇場

   “真夏の狂詩曲(ラプソディ) (お侍 番外編 62)

 

 あちこちで洒落にならない大雨の降った梅雨が、やっとのことで明けたと思や、もう今日は“立秋”だとか。

 “そういや、夕暮れ時が微妙にですが早まってましたものね。”

 なかなか花火を始められない七月の宵のじれったさから、確実に季節は流れていての、さすがは八月、ということか。そんな八月の始め、まほろばの地で催された高校総体にて、当家の次男坊こと久蔵殿が、剣道部門の個人優勝という輝かしい成績を修め。応援のためにと現地を訪れていた親代わりの二人が、随分と誇らしげな想いをさせていただいたという、興奮と至福のスタートを切った訳ではあったが。


  まさかその大会がこんな形で尾を引こうとは、
  この家の家人の誰も思ってもみなかったことだろて。


 「〜〜〜♪」

 その次男坊も、はやばやとこっちへ戻って来ており。(何でも、あちこちの競技にてあの新型インフルが微妙に台頭しつつあったからという配慮だそうで。) 今度は秋の国体へ向けての練習があるにはあったが、それもこの週末からお休みとなる。お盆を前にして指導担当の先生が休みを取ったからで、それでなくともいよいよの盛夏。根性論だけでかかっても、熱中症で倒れる子を出すだけ、危険極まりないとの“ドクターストップ”がかかってしまったのだそうで。

 “基礎トレは各自でっていうお達しだそうですが。”

 それなら、毎日のように当たり前にやっていること。やっとのこと夏休みですねと、何より自分が待ち遠しかったと言いたげに話し掛ければ、

 『〜〜〜。////////』

 ほわり、頬を染めたところが何とも愛らしかったなぁと、今頃になって思い出し、そのやさしげな口許や頬を緩ませたおっ母様こと、七郎次であったのだが、

  「…っ、おっと。」

 早めのお買い物から戻ったばかり。買ってきた食材を冷蔵庫へと仕舞っておれば、テーブルに出した携帯が、マナーモードのまま“む〜〜〜ん”というかすかな唸りを上げる。はいはいと手を伸ばせば、そこにはメールが届いていて、

 「……おや。」

 意外な人からの意外なお便りだったので、思わずのことそんなお声が出てしまった七郎次であり。そして、



  島田さんチにとっての、ややこしくも長い一日が始まってしまう、
  これが、その幕開けともなったのである。





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  *思わせぶりばかりの序章でございます。
   某様方には、お待たせしましたなネタですよvv
   ふっふっふっふvv
(おいおい)


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